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地べたから物申す:柴田錬三郎

2006.10.07(22:14)
無頼漢ならではの毒舌

地べたから物申す 地べたから物申す
柴田 錬三郎 (1995/11)
集英社
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僕の両親は本を殆ど読まないので
家には親の蔵書というものはない。
だから小学生の頃は図書室の本を片っ端から読み漁ってたけど、
読めば読むほど子供向けの本って面白くなかった。
要はひねたガキだったのである。
まあ、今でも十分に性格歪んでるけど。

逆に祖父は運転手付きの車が朝迎えに来るような官僚だったので
さすがに祖父の家には沢山の本があった。
だから僕は祖父の家に行くと書庫にこもり
朝から晩まで本を読みふけった。

そして気に入った本は可愛く
「おじーちゃん、この本ちょうだい♪」
ってねだって、家に持って帰った。
この本も祖父宅から小学4年生の時に強奪した本。
こんな本を欲しがる小学生もどうかと思うが・・。

初版は昭和51年
薄汚れてしまっているけど、今でも僕の本棚に入ってる。

あ、今も祖父は健在ですからね。そろそろやばいけど。

(以下、超長いので興味のない人は読まないことを推奨)

眠狂四郎等の作品を書き、「シバレン」の名で親しまれた
大衆作家柴田錬三郎のエッセイ集。

当時の世相、政治家、同業者、歴史、美学
ギャンブル、ワイン、戦争、オカルトと
そのテーマは多岐にわたっている。
そして高所からではなく、大衆作家つまり地べたからの
物言いなので皮肉に満ちてるけど嫌味じゃない。

30年前の話だけど、
腐敗した政治家、低レベルのマスコミ、底の浅いブーム・・。
結局日本って変わってない。
だから今読んでも十分面白い。

好きな話をいちいち紹介したらきりがないので
特に好きな話を。

まずは昭和20年、搭乗してた輸送船が米潜水艦の
雷撃を受けて沈没し、バシー海峡を数時間漂流し
奇跡的に生還したエピソード。

これは凄まじい体験なのだが
この数時間が氏にとって生涯の空白だそうだ。
表現するならたった一言。
「ただ茫然と海上に浮いていた。」

同じく奇跡的に一命をとりとめ漂流してる戦友が
力尽きて次々と流されていく極限的な状況で、
一番鮮明な記憶が

「小便をしたところ、それが胸の方まであがってきて、
そのあたたかさが、たまらなく気持ちがよかった。」


この妙な生々しさが、
却って戦争の非日常性と人間の強さを印象付ける。

そして、この経験の自分の人生にとっての意義について、

「あの経験は私の人生の上で何の意義もなかったということになる。」

「数万人かに1人という出来事に遭ったのが、
なんの意義もないとなると、人間は生き方について
妙にもったいぶった理屈をつける必要はないのではないか」



人生に意味があるのか?
肯定も否定もできないし、ある意味禅問答ではあるが
どんなに凄まじい体験でも「意味がない」と言いきれることもあるし、
逆に些細なことでも人は変わることができたりもするから
僕は生きていくのって面白いと思うんだけどね。

他愛もないけど大切な思い出もあれば
氷雨のように心を突き刺す言葉もある。
触れる指の冷たさも、受話器越しの暖かさも
過去、現在、未来、仕事、勉強、先輩、後輩
意味を考えてあんまり悩んでもしょうがない。

重油の海で消えていく命よりも鮮烈な小便の温もりもあるんだから。



もうひとつの好きな話は川端康成の話。
ろくに知識もないくせにひけらかす評論家・作家などに対する
痛烈な皮肉のエッセイ。

逆に小難しい言葉を小説に用いなかったのが川端康成。

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。」

余りにも有名で味わい深いこの一文。

だが川端康成の凄いのは、佐藤春夫の葬儀にあたり
たった一晩で書き上げたこの弔辞

シバレンもこう書いている。
「私が敢えて佐藤家からその弔詞を借りて、左に写すのは、
川端康成がその小説に一文字も解し難い漢字を
使わなかったからである。」

以下、川端康成の弔辞。

「いまだ生を知らずいずくんぞ死を知らんや
生は全機現なるをいまだ確かめ得ざれば
死は全機現なりとはさらに覚り得ず
幻人幻境に遊ぶのみ
然りといへども死生別あり幽明異なり
今ただ天外に顔を出す佐藤春夫大人千尺の雲を飛ぶ鶴の如き
詩人を失ひてすでに寒影動き夕陽昏き
私誄祠を献ぜんとして胸中の海水更に一滴の遺るなきが如し
紅日天心に到るを万人胆仰せしこの高氏私達の世界を去りたるや
水を掬すれば月手にあり花を弄すれば
香衣に満ちたる詩人私達の世界に還らざるや
否私たちはこの高氏詩人と別れる能はず
斎場は別れる所にあらず葬儀は別れる時にあらず
私たち少年の頃より詩人の業を讃歎し啓発せられたる者なほ多く生存せり
また詩人の美と志と憤りを継ぐ者明日も現れん
されば佐藤大人の大死一番現前たるべし
奇なる哉この詩人の死や
悲愁のうちに千峰雨霽れて露光冷しきを感ず
心奥を貫きて開眼を促す
時は五月 詩人の古里にたちばなの花咲くならんか
ほととぎす心あらば来鳴きとよもせ」


これは凄い。小学生のときも凄いと思ったが
今読むともっと凄さが解る。

シバレンもこの文には感嘆する。

「その詩藻の豊かさに私は三嘆し、恐らくはいずれかの故事からの
引用と考えられる雅句が幾箇所かにちりばめてあったが
こちらは無学にして思い当たらなかった」

分野は違うがピカソも写実的な絵も抜群に上手かったという。
そういう「できる」「しってる」上での平易さに
明治生まれの「文士」の凄みを感じますね。

僕もそういう秘する美学を持ちたいが・・無理だな。

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コメント
>「あの経験は私の人生の上で何の意義もなかったということになる。」

人生とはなにかを永遠に考え続けている僕は実はこうなんじゃないかと思っているんだけど、それじゃあ、あまりにも悲しいじゃないかとも思ったり、いろいろなパラドックスの念があります。ただマキさんの「生きていることがおもしろい」というのはすごく同意。自分の人生ならなおさらそう思います。

と、真面目に書くのも恥ずかしいので、

>さすがに祖父の家には沢山の本があった。

僕の実家の父親の書斎にも結構な本があるのですが問題はその中に「みこすり半劇場」が鎮座していることです。

【2006/10/07 22:41】 | 鎮痛剤 #- | [edit]
>「できる」「しってる」上での平易さ
凄く難しい事ですよね・・・
賢いってアピール
優位性をアピール
どうしても、平易と反対の事が多くなってしまいます。
【2006/10/08 01:00】 | マー坊 #- | [edit]
>重油の海で消えていく命よりも
>鮮烈な小便の温もりもあるんだから。

 自分もそんな小便が出来れば本望です。

 油断すると直ぐに小洒落たドラマでも見ようとするんだから性質が悪い。
【2006/10/08 04:00】 | もりしゅん #hVtMaeww | [edit]
親戚の中や、近所の重鎮など明治生まれの人って本当に凄いと思います。
どの人と話をしても、2冊や3冊は軽く本に出来る位の生き様があったり、信じられない体験をカラッと語ってみたり、ちょっとやそっとの出来事じゃぁ、ちっとも動じない。あんなばあちゃんになりたいッ!って言う爺ちゃん、婆ちゃんがたくさんいる。
私は、在宅勤務なので、結構昼間は自由な時間ができます。爺ちゃん・婆ちゃんとの茶のみ話は、もっか私の人生の肥やしですね。
【2006/10/08 16:45】 | naobin #- | [edit]
>鎮さん
パラドックスというかこの問題が解決してしまうと
世の哲学者、宗教家からエセ教祖、インチキ占い師までが
仕事を失ってしまうわけで・・。
永久に答えは出ない問答だと思いますよ。
何かに打ち込んでるときは考えるのもよし
悩んでるときは笑い飛ばすのもよし、
ってぐらいのスタンスです僕は。

>3こすり半
それはDNA。
【2006/10/08 23:44】 | マクイス@管理人 #W4pc5dQ. | [edit]
>マー坊さん
僕もついついひけらかしたがってしまう人です。
ていうか人間やっぱ色気があるので
中々難しい、難しいだけにそれができる人は
やっぱ凄いってことなんだろうなと。

>もりしゅんさん
>自分もそんな小便が出来れば本望です。

是非ライブで紙オムツ装着で最高の小便を・・・(笑)
【2006/10/08 23:47】 | マクイス@管理人 #W4pc5dQ. | [edit]
>naobinさん
別に昔を必要以上に美化するつもりはありませんが、
昔の教育を受けてる人の字の綺麗さとか言葉遣いに
はっとする時があります。
まあ、馬鹿な年寄りも当然いますが。

だてに激動の時代を生き抜いてないなぁと
こればっかりはもう絶対越えられない壁ですね。
祖父母の世代の話しを直接聞くのは
今が最後のチャンスだと思うので
その世代の人の言葉や体験を聞く機会があったら
沢山聞いてみたいなと。やっぱ抜群に面白いんです。

うちの祖父なんて軍の幼年学校の合格を取り消されてますから。
一体、なにをやってんだと(笑)
【2006/10/08 23:53】 | マクイス@管理人 #W4pc5dQ. | [edit]
“いまだ生を知らずいずくんぞ死を知らんや”
論語の孔子の言葉ですが、昔の文化人は漢籍の素読をよくやったと聞きます。
その語感の蓄積が、平易な文章を綴る際にも生きてくるのかも知れませんね。
ただ、教養という面で考えると昔の教養が必ずしも今のそれと同じかというと、
そうでもない。電子メールも使えない人は、どんなに古典の知識があっても現代の文化人とはいい難い。
知を追求する作業にはきりがないですよね。僕はすでに諦めてて(苦笑)、
通俗に生きることにしてます。だからといって、シバレンのようにインテリではないから、ただの俗人ですが。

【2006/10/09 00:18】 | さもあソ #RFphBmaY | [edit]
>教養という面で考えると昔の教養が
>必ずしも今のそれと同じかというと、そうでもない。

納得です。もはや「官学」といったものはないですしね。

まあ、なんていうか、井上マサオが総格に出たら
凄まじく強かった的なロマンが川端康成にはありますよね。
どんな例えだ・・しかもありえないし・・。

結局は温故知新ってことなのかも。
通俗的かどうかは関係ないし、通俗もまた知だと思いますし
僕にはさもさんが諦めてるようには見えませんよ♪
感心させられることが多いです。
【2006/10/09 10:14】 | マクイス@管理人 #W4pc5dQ. | [edit]












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